通勤手当が社会保険料対象なのはなぜ?

社会保険料は、毎年4月から6月の報酬の平均額で計算する「標準報酬月額」に、所定の保険料率を掛けて計算します。そのため、標準報酬月額に通勤手当が含まれると、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料が増えてしまう場合があります。
通勤手当が社会保険料の対象になる理由は「報酬の定義」にあります。たとえば、健康保険法では報酬を次のように定義しています。
【健康保険法】
第三条
5 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
つまり、通勤手当も「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」のなかに含まれるため報酬の一部で、報酬の一部だから標準報酬月額の計算の対象に含めるという考え方なのです。
日本年金機構のウェブサイトにも、次のような記載があります。
標準報酬月額の対象となる報酬とは、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを含みます。また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。
先に紹介した「社会保険料・労働保険料の賦課対象となる報酬等の範囲に関する検討会」の資料によると、標準報酬月額に通勤手当が含まれてきた理由は1952年(昭和27年)の厚生省保健局健康保険課長の疑義解釈(法令や診療報酬などの疑問点への回答)にあるとのこと。「(通勤手当は)被保険者の通常の生計費の一部に当てられているのであるから(中略)当然報酬と解することが妥当と考えられます」と回答していることを根拠にして通勤手当も社会保険料の算定に加えてきたのです。
ここまで読んできた方なら、税法上の解釈が妥当ではないかと思うことでしょう。
通勤手当は自由に生活に使えるわけではありません。同じ基本給にも関わらず、通勤手当のある無しで、月額の保険料で数千円以上高く支払うのはやはりおかしいですよね。
所得税法では実費弁償として非課税所得になっていて、社会保険上の解釈は保険料賦課対象としているのはやはり不合理です。
ただし、税法上の解釈に統一するとしても簡単ではありません。
通勤手当を社会保険料の対象外にすると、日本全体の保険料収入が減少します。それを賄うためには、保険料率の引上げが不可避です。
また、各人で通勤手当の金額に差異があるので、一律の対応が全体を通じた公平性の確保につながるのか検証しなければなりません。
さらに、通勤手当を社会保険料の対象外にすると、多くの場合標準報酬月額が下がることになり、失業給付・傷病手当金・出産手当金の給付額が下がることにつながります。国民の理解をしっかり得なければなりません。
多少時間はかかったとしても、社会状況に即した改正が進むことを願っています。